説明

ポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法

【課題】凍結保存されたポリヒドロキシ酪酸産生菌を用いて、高収率でポリヒドロキシ酪酸産生菌を得ることのできるポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法は、凍結保存されたポリヒドロキシ酪酸産生菌を用いたポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法であって、凍結保存された前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を解凍する解凍工程S1と、解凍した前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を15〜20%(w/v)の硫酸アンモニウム水溶液に添加して遠心分離する遠心分離工程S2と、遠心分離して得られた上清に含まれるポリヒドロキシ酪酸産生菌を液体培地に添加して培養する培養工程S3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシ酪酸を産生するポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には非常時に備えて菌体内にポリエステル樹脂の一種であるポリヒドロキシ酪酸を産生して蓄積する菌(以下、ポリヒドロキシ酪酸産生菌という。)が存在する。ポリヒドロキシ酪酸は、生分解性樹脂として工業的に使用することが可能であるが、培養および精製が高コストであるため普及が遅れている。
【0003】
ポリヒドロキシ酪酸産生菌を培養する場合、予め−80℃程度の温度で凍結保存されているものを解凍して用いるのが一般的である。
例えば、特許文献1は、植物細胞を凍結保存する発明に関するものであるが以下のように記載されている。この特許文献1には、植物細胞を、しょ糖、グリセリン、エチレングリコールおよびジメチルスルホキシドを含有する凍結保護剤の存在下に凍結せしめる旨、および、常温より−20℃までは0.1〜0.5℃/分の冷却速度で冷却し、−20℃〜−80℃までは0.3〜1.0℃/分の冷却速度で冷却し、次いで液体窒素中で急速冷凍する旨が記載されている。また、かかる特許文献1には、凍結した植物細胞を35〜42℃で急速解凍する旨も記載されている。解凍された植物細胞には活性が必要であることはいうまでもない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−87102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、凍結保存された菌を用いて培養できればよしとして、特許文献1に記載されているように凍結保存された菌を解凍して菌の活性に関係なく一律に培養していたが、従来の方法では、回収菌体量が菌体の活性に大きく影響されるために高収率化を図ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、凍結保存されたポリヒドロキシ酪酸産生菌を用いて、高収率でポリヒドロキシ酪酸産生菌を得ることのできるポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記課題を解決した本発明に係るポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法は、凍結保存されたポリヒドロキシ酪酸産生菌を用いたポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法であって、凍結保存された前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を解凍する解凍工程と、解凍した前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を15〜20%(w/v)の硫酸アンモニウム水溶液に添加して遠心分離する遠心分離工程と、遠心分離して得られた上清に含まれるポリヒドロキシ酪酸産生菌を液体培地に添加して培養する培養工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
このように、ポリヒドロキシ酪酸産生菌を解凍した後、特定の濃度の硫酸アンモニウム水溶液に添加して遠心分離することで、遠心分離して得られた上清に含まれている活性の高いポリヒドロキシ酪酸産生菌と、沈殿した活性の低いポリヒドロキシ酪酸産生菌とを分けることができる。そして、上清に含まれる活性の高いポリヒドロキシ酪酸産生菌を選択的に用いて培養することにより、ポリヒドロキシ酪酸産生菌を高収率で得ることが可能となる。
【0009】
(2)本発明においては、前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌がラルストニア・ユートロファであるのが好ましい。
このようにすれば、前記した解凍工程と、遠心分離工程と、培養工程とを行うことによって、ポリヒドロキシ酪酸産生菌であるラルストニア・ユートロファを高収率で得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法によれば、凍結保存してあるポリヒドロキシ酪酸産生菌を解凍して、活性の高い菌体を選択して培養することができるので、培養工程の効率化と高収率化を図ることが可能となる。そのため、ポリヒドロキシ酪酸のコストの低減を図ることができる。また、ポリヒドロキシ酪酸の普及を促進することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の特徴は、凍結保存され、解凍されたポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate;以下、単に「PHB」と称する。)産生菌の活性の差異による培養条件や収率のばらつきを改善するために、凍結保存された菌体を溶媒中に添加した後に遠心分離して上清に含まれる菌体と、沈殿する菌体に分離して、上清に含まれる菌体を選択的に利用して培養することで、従来の培養方法よりもPHB産生菌の収率を向上させる点にある。
【0012】
なお、本発明のPHBには、菌体がPHBを産生するとともに、PHBと共重合し得る他の脂肪族ポリエステル、例えば、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸などを不可避的または意図的に含む、PHBを主体としたポリエステル化合物またはその誘導体が含まれる。ここで、他の物質などを不可避的に含むポリエステル化合物とは、用いたPHB産生菌の菌株がPHBを産生する際に副産物として、前記した脂肪族ポリエステルのいずれかを産生するために、これが含まれてしまう場合のポリエステル化合物を意味し、他の物質などを意図的に含むポリエステル化合物とは、例えば、遺伝子組み換え等の技術を用いて、PHBとともに前記した脂肪族ポリエステルのいずれかを産生させるように形質転換したPHB産生菌の菌株を作出し、かかる菌株によって産生された、前記した脂肪族ポリエステルのいずれかを含むPHBを主体とするポリエステル化合物を意味する。
かかるPHBを蓄積した菌は、PHBを蓄積していない菌と比較して運動性や細胞分裂速度が低くなる傾向にある。本明細書ではこのような傾向にあるものを「活性が低い」と称し、PHBをほとんど蓄積しておらず、運動性や細胞分裂速度が高い傾向にあるものを「活性が高い」と称することとする。
【0013】
なお、本発明では、凍結保存されたPHB産生菌を用いて培養するものであるが、PHB産生菌の取り扱いや培養を行う際に必要な操作について、発明を実施するための最良の形態および実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001)や、F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いることができる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いることができる。また、当業者であれば本明細書の記載および前記した標準的なプロトコール集などの記載から容易に本発明を再現することができる。
【0014】
以下、本発明に係るPHB産生菌の培養方法について図1を参照して説明する。なお、図1は、本発明に係るPHB産生菌の培養方法のフローを示すフローチャートである。
本発明に係るPHB産生菌の培養方法は、凍結保存されたPHB産生菌を用いた培養方法であって、図1に示すように、解凍工程S1と、遠心分離工程S2と、培養工程S3とを含んでなる。
【0015】
ここで、本発明で用いることのできるPHB産生菌としては、例えば、ラルストニア(Ralstonia)属に属する菌を用いることができ、中でも、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)を好適に用いることができる。かかるPHB産生菌を用いると、本発明に係るPHB産生菌の培養方法によって高収率で得ることができるので好適である。
なお、本発明で用いることのできるPHB産生菌は前記したものに限定されるものではなく、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、アチオロージウム(Athiorhodium)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、バチルス(Bacillus)属、ノカルジア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾビウム(Rhizobium)属、スピリルム(Spirillum)属なども用いることができる。さらに、遺伝子組み換え等の技術により形質転換させたPHB産生菌を用いることも可能である。
【0016】
そして、一般的に、工業的に利用される前記した菌体は、液体培地に植菌された後、指数増殖期における所定濃度、例えば、OD600で0.1〜0.6などに調整されてグリセロールなどの凍結保護剤が添加された状態で徐冷された後、液体窒素中にて凍結保存されている。そして、凍結保存されている菌体を用いて培養する際は、凍結保存された菌体を解凍し、必要に応じて凍結保護剤を除くなどした上で培養を行っている。
【0017】
本発明における解凍工程S1は、前記したようにして凍結保存されたPHB産生菌を解凍する工程である。凍結保存されたPHB産生菌の解凍は、25〜30℃/分程度、より好ましくは20〜35℃/分程度の解凍速度で急速解凍の解凍速度で急速解凍することを例示することができる。なお、解凍速度がこれ以上に速くなってもよいことはいうまでもない。ただし、解凍されたPHB産生菌の到達温度が45℃を超えないようにする必要がある。解凍されたPHB産生菌の到達温度が45℃を超えると、温度が高すぎるためにPHB産生菌が死滅してしまうおそれがあるからである。
【0018】
解凍工程S1による解凍は、室温で放置することによって行うこともできるが、例えば、前記した到達温度以下の温度で湯煎等することによっても行うことができる。
凍結保存されたPHB産生菌の解凍が終了した後は、必要であれば、例えば、氷中や4℃で一時的に保存しておいてもよい。
【0019】
次に行う遠心分離工程S2は、解凍したPHB産生菌を15〜20%(w/v)の硫酸アンモニウム水溶液に添加して遠心分離する工程である。硫酸アンモニウム水溶液を用いると、硫酸アンモニウムの比重が大きいために15〜20%(w/v)といった比較的低濃度の水溶液であっても比重差をより大きくすることができる。そのため、活性の高いPHB産生菌と活性の低いPHB産生菌を分離することができる。また、後記するようにPHB産生菌の栄養源として使用しているものであるため、PHB産生菌に与える影響を小さくすることができる。
ここで、硫酸アンモニウム水溶液の濃度が15%(w/v)未満であると、分離できない部分が生じるおそれがある。一方、硫酸アンモニウム水溶液の濃度が20%(w/v)を超えると、PHB産生菌に悪影響を与えるおそれがある。硫酸アンモニウム水溶液の濃度は、例えば、17%(w/v)とすると好適である。
なお、遠心分離工程S2で用いることのできる水溶液としてはこれに限定されるものではなく、活性の高いPHB産生菌を含む上清を得ることのできる無機酸塩水溶液、例えば、燐酸アンモニウム水溶液や塩化アンモニウム水溶液といった燐酸塩水溶液や塩酸塩水溶液なども用いることができる。
【0020】
そして、遠心分離工程S2における遠心分離の条件は、遠心分離によって活性の高いPHB産生菌と活性の低いPHB産生菌とをこれらの比重差によって分離することができればよい。活性の低いPHB産生菌は冬眠物質として菌体内にPHBを蓄積することが多いため、活性の高いPHB産生菌と比較すると比重が重くなることが多い。そのため、適切な条件で遠心分離を行うと、活性の高いPHB産生菌は沈殿せず上清に浮遊した状態で存在し、活性の低いPHB産生菌のみが沈殿する。そのため、遠心分離の条件は、上清に含まれる活性の高いPHB産生菌と、沈殿する活性の低いPHB産生菌とを分離して得ることができる程度とすればよく特に限定されるものではないが、例えば、10000〜12000回転/分(rpm)で2〜4分間とすることができる。
【0021】
遠心分離の条件が10000rpm未満であったり、2分間未満であったりすると、遠心分離を十分に行えないために、上清に含まれる活性の高いPHB産生菌と、沈殿する活性の低いPHB産生菌とを分離することができないおそれがある。一方、遠心分離の条件が12000rpmを超えたり、4分間を超えたりすると、遠心分離の条件が厳しすぎるために活性の高いPHB産生菌も沈殿してしまい、活性の低いPHB産生菌と分離することができないおそれがある。具体的には12000rpmで3分間などとすることができる。
【0022】
遠心分離時の温度は、PHB産生菌の活性が低下してしまわないよう、例えば、30〜36℃とするのがよい。遠心分離時の温度が30℃未満であると、温度が低すぎるために活性が低下してしまうおそれがある。一方、遠心分離時の温度が36℃を超えると温度が高すぎるために菌の増殖に悪影響を与えてしてしまうおそれがある。具体的には、34℃などとすることができる。
【0023】
図2(a)は、遠心分離工程S2による遠心分離を行う前の様子を示す写真であり、(b)は、遠心分離工程S2による遠心分離を行った後の様子を示す写真である。
図2(a)に示すように、遠心分離を行う前は、前記した特定の濃度の硫酸アンモニウム水溶液上に解凍したPHB産生菌が重層されただけであるが、遠心分離を行うと、図2(b)に示すように、比重の重いPHB産生菌が遠心分離用コニカルチューブの底部分に沈殿しているのが分かる。なお、図2(b)に図示はしないが上清には比重の軽いPHB産生菌が浮遊している。これは、活性が高くPHBを菌体内に蓄積していない(すなわち、比重の軽い)PHB産生菌は沈殿せず、活性が低くPHBを菌体内に蓄積している(すなわち、比重の重い)PHB産生菌が遠心力により沈殿するためであると思われる。
【0024】
次に行う培養工程S3は、遠心分離して得られた上清に含まれるPHB産生菌を液体培地に添加して培養する工程である。
用いられる液体培地は、培養しようとするPHB産生菌に応じて適宜変更することができる。例えば、PHB産生菌としてラルストニア・ユートロファを用いた場合はTES(表1参照)を添加したpH7のMSM培地(表2参照)を用いることができる。なお、pHの調整は、例えば、塩酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整することができる。なお、PHB産生菌として他の菌を用いた場合は、Alcaligenes eutrophus NCIMB 11599用培地(1Lあたりグルコース 10g、(NHSO 1g、KHPO 1.5g、NaHPO・12HO 9g、MgSO・7HO 0.2g、Trance element solution 1mL(Trance element solution:0.5LあたりFeSO・7HO 5.00g、ZnSO・7HO 1.13g、CuSO・5HO 0.50g、MnSO・5HO 0.25g、CaCl・2HO 1.00g、Na・10HO 0.12g、(NHMo240.05g、35%HCl 5mL))や、LB培地(1Lあたりトリプトン 10g、イーストエクストラクト 5g、NaCl 10g、1MのNaOH 1mL)、NB培地(肉エキス 1%、バクトペプトン 1%、NaCl 0.5%、pH7.0)などを用いることができる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
培養条件も用いるPHB産生菌に応じて適宜設定することができる。例えば、PHB産生菌としてラルストニア・ユートロファを用いた場合は34℃程度で24〜48時間培養することや、PHB産生菌として他の菌を用いた場合は30〜36℃で数時間から数十時間の培養を行うことができる。また、必要に応じて100〜150rpm程度の振とうを加えてもよく、いわゆる本培養の前に1回から数回の前培養を行ってもよいことはいうまでもない。また、培養方式は、ジャーファーメンターなどを用いた連続式でもよく、一定量ごとに行うバッチ式でもよい。
【0028】
培養したPHB産生菌の収量は、培養したPHB産生菌を含む培養液を一部取り出して分光光度計により波長600nmで吸光度(OD600)を測定することにより経験的に確認することができる。また、かかる培養液を、例えば、15000rpmで3分間遠心分離することによってPHB産生菌を沈殿させて上清を除去し、得られたペレット状の湿菌体の重量を測定することによっても行うことができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
(1)材料および用法
PHB産生菌としてラルストニア・ユートロファH16株(Ralstonia eutropha H16)を用いた。ラルストニア・ユートロファH16株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)の菌を住商ファーマーインターナショナル(株)から購入した。
液体培地は、5mLでの前培養および100mLでの本培養ともに、下記表3に示す組成のTESを添加した下記表4に示す組成のMSM培地を用いた。なお、MSM培地は塩酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調整した。かかるMSM培地は、120℃、20分間の条件でオートクレーブを行ったものをラルストニア・ユートロファH16株の培養に使用した。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
まず、凍結保存されているラルストニア・ユートロファの保存液を36℃の湯煎にて解凍した。解凍したラルストニア・ユートロファの保存液2.5mL×2本(計5mL)を50mLの17%(w/v)の硫酸アンモニウム水溶液に添加して12000rpm、34℃、3分間の遠心分離を行った。得られた上清から100μL分取して5mLのMSM培地に添加し、120rpmの旋回振とうを行いつつ34℃、24時間の条件で前培養を行った。前培養液5mLを100mLのMSM培地に添加して、前培養と同様、120rpmの旋回振とうを行いつつ34℃、24時間の条件で本培養を行った(試験No.1)。
【0033】
また、前記した遠心分離で沈殿したペレット状の菌体を白金耳でピックアップして、前記と同様の条件で前培養および本培養を行った(試験No.2)。
【0034】
さらに、従来行われている培養方法として、凍結保存したラルストニア・ユートロファの保存液2.5mL×2本(計5mL)をそのまま解凍用MSM培地100mLに添加して解凍し、得られた懸濁液100μLを前記と同様の条件で前培養および本培養を行った(試験No.3)。
【0035】
(2)湿菌体の秤量
次に、得られた試験No.1〜3の本培養液を4℃、15000rpm、3分間の遠心分離を行って菌体を沈殿させた後、上清を除去した。このようにして得られた試験No.1〜3の湿菌体の重量を電子天秤にて測定した。試験No.1の湿菌体量は28.8g/L、試験No.2の湿菌体量は21.8g/L、試験No.3の湿菌体量は20.7g/Lであった。試験No.1の湿菌体量は、試験No.2の湿菌体量や試験No.3の湿菌体量と比較して1.3〜1.4倍程度多かった。すなわち、前記した遠心分離によって得られた上清に含まれる菌体は活性が高く、沈殿した菌体は活性が低いことが分かった。
【0036】
以上、本発明のポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法について、発明を実施するための最良の形態および実施例を示して具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に何ら限定されるものではなく、その権利範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、当業者であれば、本発明の発明を実施するための最良の形態および実施例の記載に基づいて容易に変更、改変して本発明のポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法と均等な方法を得ることができ、そのようなものも本発明のポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るPHB産生菌の培養方法のフローを示すフローチャートである。
【図2】(a)は、遠心分離工程S2による遠心分離を行う前の様子を示す写真であり、(b)は、遠心分離工程S2による遠心分離を行った後の様子を示す写真である。
【符号の説明】
【0038】
S1 解凍工程
S2 遠心分離工程
S3 培養工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存されたポリヒドロキシ酪酸産生菌を用いたポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法であって、
凍結保存された前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を解凍する解凍工程と、
解凍した前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌を15〜20%(w/v)の硫酸アンモニウム水溶液に添加して遠心分離する遠心分離工程と、
遠心分離して得られた上清に含まれるポリヒドロキシ酪酸産生菌を液体培地に添加して培養する培養工程と、
を含むことを特徴とするポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシ酪酸産生菌がラルストニア・ユートロファであることを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシ酪酸産生菌の培養方法。

【図1】
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【図2】
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